弁護士堀鉄平の交渉の奥義!”「兵は拙速を尊ぶ」の真髄” その2
(その1の続きです!)
この状況での選択肢としては、
①証人尋問まで経て、あくまでも1000万円全額を認めさせ、
そうすると判決は半年ほど先になるが、あくまでも満額の回収を目指す方法と、
②700万円で和解して、さっさと支払ってもらうという方法とがありました。
私は、常々、「和解は生ものである」と考えていて、
せっかく相手方が700万円であれば判決で支払義務が下されたわけでもないのに
「支払う」と言っているにもかかわらず、即時に和解しないで次回に持ち越しになどした場合は、
相手方は「気が変わった」などと言って和解に応じなくなるケースが容易に想像できました。
また、相手方の資金繰りは必ずしも良くない状況であることが予想できましたので、
仮に900万円の和解にこだわって交渉を長期化させたり、
証人尋問まで待って1000万円の判決を待っていたのでは、
その間に相手方が破産するなどして、
結局1円も回収できないというリスクがかなりの確率で想定できました。
そこで、私は、700万円の「現実の回収」という成果を優先し、
その日のうちに交渉をまとめてしまう方が得策だと考え、
クライアントには②の解決を強く説得したのでした。
これは余談ですが、その相手方企業は、私のクライアントに対しては、
約束どおり700万円の支払いをしてきましたが、
その後、その他の企業からも多数訴訟を提起されて、
今ではすべての企業に対し、一律に請求の1割での和解を提示しているとのことでした。
優れた経営者は、1年後の1億円の儲け話よりも、
今日、目の前で確実に500万円をモノにするということを覚えておいてください。
やり手の営業マンが、「ちょっと考えさせてください」と保留する主婦に対して、
大幅な割引をしてでも、その日のうちに契約をまとめようとするのはこのためなのです。
では、今回はこの辺で。最後までお読みいただき、ありがとうございました。