弁護士堀鉄平の交渉の奥義!『持たざるべきは、権限!』 その1
「権限が無いのでお帰りください」
さて、本日は、交渉においては、
「権限を持ってはいけない」ということを覚えていただきたいと思います。
特定商取引法という法律がありますが、
その中に、訪問販売により購入した商品については
8日間以内であれば理由もなく解約できるというクーリングオフ制度が定められています。
いきなり自宅に訪問されて、検討する間もなく購入を迫られた消費者を保護するために、
消費者保護の精神から定められた制度です。
一般の主婦の方が、海千山千の販売員に対して、
「うーん。値段が高すぎます。」とか、
「普段使いませんから。」などと言って断ってみても、
「価格で迷われているのならば、最大限譲歩させていただきます」とか、
「こういうときに必要な時が来ますよ」などとたたみかけられてしまい、
結局根負けして契約してしまうということはよくあるのです。
これは、主婦の方に契約するかどうかの権限があることを前提としつつ、
契約すべきかどうかの議論をしてしまっているからに他なりません。
契約すべきかどうかの論証については、
販売員の方に圧倒的なノウハウがあるわけですから、
そこのレベルで戦うと説得されてしまう可能性が高いのです。
この場合は、「お金のことは主人が100パーセント決めていますので、
私には一切権限がないのでお帰りください。」の一点張りが正しい反撃方法です。
「主人でないと決められない」という人に対して、
「主人がいなくても大丈夫だ」と論証できる販売員はなかなかいません。
権限を持たないことによって、契約すべきかどうかという
妥当性の議論のレベルの手前で切ってしまうのが優れた交渉術なのです。
(その2に続きます!)