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『共有に属する株式の議決権行使に関する最新判例と今後の対策』① 弁護士 齋藤 拓

『共有に属する株式の議決権行使に関する
        最新判例と今後の対策』① 弁護士 齋藤 拓

 

第1 はじめに

日本では,家族経営の株式会社が数多く存在しています。
そのような会社では,代表者が引退するときなどに,
家族の間で経営権争いが起こり,裁判になることも少なくありません。

たとえば,気にいらない親族の株主にだけ株主総会への招集通知を送らずに,
その株主抜きで株主総会を開き,取締役を選んだりすると,
株主総会に呼ばれなかった株主から,取締役選任決議の取消しを求めて,
裁判所に訴えることがよくあります。

また,株主が死亡して相続が起こると,
株主が相続人の間で共有状態となり,さらに事態は複雑になります。

最高裁は,昨年2月19日,
このような取締役を選任する株主総会決議の取消しを求める訴えがなされた事件において,
共有状態にある株式の議決権の行使に関わる問題について,
初めての重要な判断を示しました。

以下では,この事件のあらましと最高裁判所の判断をご紹介し,
このような事件が起こらないようにするためには,どのような
対策が必要となるのかについて考えてみたいと思います。

第2 最高裁平成27年2月19日第一小法廷判決(民集69巻1号25頁)

1 事件のあらまし

株主Aさんの妹であるBさんとCさんは,
Aさんが亡くなったことに伴い,Aさんが持っていたX社の株式2000株を,
それぞれ2分の1の割合で相続しました。

これに伴い,株式2000株はBさんとCさんの共有状態になりました。

このような場合,法的には,BさんとCさんは1000株ずつ保有しているわけではなく,
2000株を共有していると取り扱われることになります
(遺産分割の手続きを踏めば,1000株ずつに分けられるのですが,
その手続きを踏まない限りは共有になってしまうのです。)。

Bさんは,X社の株主総会で,Cさんの了解なく,2000株の議決権を行使し,
Dさんを取締役に選任する議案に賛成しました。

X社は,Bさんによる議決権行使を有効と認めるほうが都合がよかったので,
会社法第106条という条文に,株式が共有になっているときは共有者間で
権利行使をする者を定めなければならないとの規定がある一方で,
例外として,株式会社が同意すればそのような手続をとらなくても
議決権行使を認めてよいと書いてあることに目をつけて,
Bさんの議決権行使を有効として,Dさんを取締役に選任したのです。

Cさんは,このような自分を無視した決議は,
取り消されなければならないと主張して,裁判になったのです。

2 最高裁判所の判断

最高裁判所は,共有者であるBさんとCさんが多数決で決めなければ,
議決権の行使は認められないと判断しました。
会社法第106条が定める例外規定も,このような多数決によって
決める手続きを無視してよいという意味ではないとしたのです。

このようにして,Cさんを無視した株主総会決議は取り消されたのです。

この最高裁判所の判断によれば,2000株の議決権の行使は,
BさんとCさんが多数決で決めなければなりません。
しかし,BさんもCさんも,2000株をそれぞれ2分の1の割合で相続していますから,
多数決をしようとしても,どちらも過半数がとれず,
この2000株の議決権の行使は,とても難しい状況に陥ることになります。

 

(②に続きます!)

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