強固な盾となる,「誠実な対応」その2 弁護士 堀 鉄平
(その1の続きです!)
盾として、矛として
私は、顧問先に対して、相手方から、バッグの種類、
バッグの在中物に何が入っていたのか、警察に紛失届を出しているかどうか等について、
具体的な資料を頂戴するようお願いしました。
また、相手方の請求額200万円についての計算根拠を聞くようにお願いしました。
相手方は、自分の要求額をそのまま受け入れてもらえないことに怪訝な顔をする一方で、
この頃にはこれまでの当方の誠実な対応を評価していただいていましたので、
渋々ではありますが資料の提出にご協力いただけました。
頂いた資料を精査すると、紛失したバッグはブランド物のバッグではあったものの、
当方で調査をした結果、現在ではそれほど価値が高くないことが分かりましたので、
当方は、そのことを相手方に伝え、調査資料を示しながら、当方が考える弁償額について説明をしました。
さらに、相手方が弁償を要求していたバッグの在中物のうち、
ネックレスは、通常、バッグの中に入っているとは認めづらいことを伝えました。
すると、相手方から、ネックレスについては自分もバッグの中に入っていたか
自信がないとの話をいただき、弁償額からはずすことにご納得いただきました。
最終的には、75万円の弁償をすることで無事示談が成立し、
この結果には顧問先に大変満足をしてもらったことは言うまでもありません。
交渉開始早々にいきなり資料の提出を要求すれば、
相手の怒りは頂点に達したでしょうが、十分丁寧に対応した後に、
さらに丁寧な対応をするために資料が必要であることを述べれば、
相手方も協力的になるものです。
そして、出てきた資料に基づいて、適正な金額だけを賠償すれば、
不当な賠償金を支払わされるおそれもありません。
このように、誠実な対応は、相手方の怒りを鎮める盾となるだけでなく、
相手の要求を減殺する矛としての役割も果たします。
世界最高峰のサービスで有名なリッツカールトンホテルでは、
「紳士淑女をおもてなしする私たちもまた紳士淑女です」をゴールドスタンダードとして、
最高のサービスは、相手にへりくだる事ではないことを示唆していますが、
誠実な対応というのも、同様の文脈で捉えるべきなのです。
それでは、今回はこのあたりで。最後までお読みいただきありがとうございました。