弁護士法人Martial Artsの『EC相談室!』サイトコンテンツの「パクり」にどう対応する?その② / 弁護士吉新拓世
(その①の続きです!)
第3 貴社は「著作権者」???
1 著作権者とは?
貴社のウェブサイトやそのコンテンツの一部が,「著作物」といえるとしても,
貴社がその「著作物」について権利を主張するためには,
貴社が,その「著作物」に関する「著作」を有している,
つまり,貴社が「著作権者」である必要があります。
2 従業員に製作させた場合にはどうなる?
ウェブサイトやそのコンテンツについては,
従業員が作成している場合もあるでしょう。
この場合,著作権者は誰になるのでしょうか。
たしかに,実際に「著作物」を作っているのは,
貴社の従業員であって,会社ではありません。
しかし,従業員が職務上作成した「著作物」を,
会社が会社の名で公表する場合の著作権は,
会社のものになるという規定が著作権法に定められています
(著作権法15条。これを「職務著作」といいます。)。
ですから,貴社の従業員が作成した場合も貴社が著作権者となります。
3 写真の場合の注意点
写真の場合にも,写真の著作権者は誰なのかが問題になります。
上記の通り,写真が著作物になるのは,写真の撮り方等に創意工夫があるからです。
その創意工夫をしているのはカメラマンですから,
カメラマンが著作者であり,著作権を有するということになるのです
(貴社の従業員が撮影したのであれば,上記のとおり職務著作として,
貴社が著作者となり,著作権も貴社のものになります。)。
ですから,外部のカメラマンに依頼した場合には,
貴社がカメラマンから,著作権を譲り受けている必要があります。
著作権を侵害されたという主張をしていくためには,
貴社自身が自ら著作権者であることを証明することが求められます。
そのときに,カメラマンとの間で著作権の譲渡について
定められている契約書がないと困る場合があります。
ですから,外部のカメラマンに依頼する場合には,
著作権の譲渡について明確に定めた契約書が必要になるのです。
4 外部委託している場合の注意点
ウェブサイトの作成を外注している場合にも,同様の問題が起こります。
つまり,ウェブサイトの著作権は,ウェブサイトを作成した者にあることになります。
ですから,多くの場合,ウェブサイトを実際に作った製作会社が著作権を持つことになります。
そこで,貴社が製作会社から著作権を譲り受けなければ,
貴社は,権利の侵害について主張できないことになります。
ですから,ウェブサイトを外注に出す場合にも,貴社と製作会社との間で,
著作権の譲渡について明確に定めた契約書を作成しておくことが重要になります。
第4 どのような場合に著作権侵害となるのか
1 複製権や公衆送信権とは?
貴社が「著作物」の「著作権者」であるといえる場合,
貴社は著作物をコピーする権利を持っていることになり(これを「複製権」といいます。),
他者が貴社の許可なくコピーすることは貴社の複製権を侵害していることになります。
また,貴社は,「著作物」をインターネット上にアップロードして
利用できるようにする権利も持っていることになり(これを「公衆送信権」といいます。),
他社が貴社の許可なく勝手に貴社の著作物をインターネット上にアップロードすることは,
貴社の公衆送信権を侵害していることになります。
本件では,貴社のウェブサイトの内容がマルマル使われてしまっているものと,
少々手を加えているがウリ二つのものとがあるようですので,それぞれの場合に分けて検討してみましょう。
2 そのままコピーされている場合
そのままコピーしてアップロードされているのであれば,
複製権や公衆送信権の侵害になることは明らかです。
ただし,貴社のウェブサイトの内容をごく一部だけコピーして使っているような場合には,
相手から「引用」しているだけなので違法ではないという反論を受ける可能性があります。
たしかに,著作権法32条には「公表された著作物は,引用して利用することができる。」
という規定がありますので,「引用」であるといえる場合には著作権の侵害にはなりません。
但し,「引用」であるとして認められるのは,その引用が「公正な慣行に合致するものであり」,
なおかつ「引用の目的上正当な範囲」でなければならないものとされています。
具体的には,引用している部分を明確に区別したうえで,
引用した部分が,全体から見たときにメインではなくサブとしての位置付けになっていれば,
引用として認められるものと考えられています。
ですから,貴社のウェブサイトから引用していることや引用部分が明確になっていて,
引用部分が相手のウェブサイト全体から見たときに,ごく一部分に過ぎないなどといった場合には,
貴社のウェブサイトの正当な「引用」であって,違法ではないという場合も考えられます。
3 少し修正した形で盗用されてしまった場合
それでは,相手方の会社が,貴社のウェブサイトの内容を
ほんのちょっと変えている場合にはどうなるのでしょうか。
完全に一致しているわけではないから,
コピーではないと反論してきた場合には,どうなってしまうのでしょうか?
この点について裁判所は,完全に一致しなくても,
「表現上の本質的な特徴」が一致していれば侵害になると判断しています。
要するに,多少表現が変えられているとしても,
表現の重要部分の特徴が一致しているといえるレベルであれば,それは違法なコピーだと考えるのです。
ですから,貴社のケースでも,文章については,
「ほんのちょっと表現を変えられただけ」で,「ウリ二つ」なようですから,
貴社の著作権の侵害であるといえる可能性も十分にありそうです。
権利が侵害された場合の対処方法を次回ご紹介いたします!
(その③に続きます!)