弁護士堀鉄平の交渉の奥義!「Win-Winの関係がもたらすもの」その2
譲れない利益のために、譲れる利益を
(その1の続きです!)
そこで私が取った戦略は次の通りです。
まずは、B女に対して丁寧な謝罪を述べたのち、
A男に一人暮らしを辞めさせて実家に帰らせることを確約しました。
こうすることで、A男がB女と今後電車で一緒になる可能性はほとんどないと示したのです。
そして、示談金については、
早期の示談締結を条件に一括で50万円を支払う旨提示しました。
相場よりは若干高い金額ではありますが、
Win-Winの関係を築くためには相場の金額では足りないのです。
これにより、B女は、A男と今後接触しないですむとの確証や、
示談金をなるべく多く受け取りたいとの願いを満たすことができましたので、
A男にできる限りの重い罪を負わせたいという思いを放棄してくれたのです。
こうして、事件発生後一週間以内に、
B女と示談を締結することができました。
その結果、A男は、起訴されることなく、
罰金を支払うことで、短期間で身体拘束から解放されました。
そして、A男は、釈放された翌日から職場復帰することができたのです。
A男としては、早期の身柄解放という利益のほか、
示談金を節約したいとか、自由に住む場所を決めたいという利益もあったのですが、
交渉で目的を遂げるためには、譲れる利益は放棄して相手にも一部で勝たせておいて、
譲れない利益を確保する、すなわち「Win-Winの関係」を築くべきなのです。
スポーツの試合でぶっちぎりで完勝した場合に、
周囲に「相手は弱かった。余裕でした。」などと自慢話だけをしていても、誰からも称賛されません。
聞き手の気持ちに配慮して、「しかし、その後に打ち上げで羽目を外して、
帰宅後奥さんに平手打ちされました。」などと失敗談を加えてみてはいかがでしょうか。
自分だけが勝ち誇るのではなく、相手にも親近感を持ってもらうことは、
まさに「Win-Winの関係」と言うことができるでしょう。
是非、皆さんも目先の利益ばかりに拘らず、
「Win-Winの関係」を築くことを覚えて頂ければと思います。
それでは、今回はこのあたりで。最後までお読みいただきありがとうございました。