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『障害者の雇用に関する制度について』その② 弁護士 森 春輝

(その①の続きです!)

3 法定雇用率

常時労働者を雇用する事業主には従業員の一定割合(法定雇用率)以上の割合で
障害者を雇用することが義務付けられています(障害者雇用促進法43条1項)。

冒頭で述べたように,平成30年4月1日より,
民間企業の法定雇用率が2.0%から2.2%に引き上げられました。

雇用しなければならない障害者の数は,
常時雇用している労働者の人数に法定雇用率を乗じ,
小数点以下を切り捨てることによって求められます。

例えば,常時雇用している労働者の数が100人の企業の場合,
100×2.2%=2.2ですので,
小数点以下切り捨てにより2人の障害者を雇用する義務があることになります。

上記法定雇用率の引き上げにより,
1人以上の障害者を雇用する義務のある企業の範囲が,
労働者数45.5人以上の企業にまで広がりました。

さらに,平成33年4月までには法定雇用率が
更に0.1%引き上げられることが決まっておりますので,
その場合は1人以上の障害者を雇用する義務のある企業の範囲が
労働者数43.5人以上の企業にまで広がることになります。

そして,障害者の雇用に関する事業主の社会連帯責任の履行を確保するため,
法定雇用率を満たしていない事業主から納付金を徴収し,
障害者を多く雇用している事業主に対しては調整金や各種の助成金を支給しています。

納付金の徴収と調整金の支給は労働者100人を超える事業主のみ行われ,
法定雇用率を達成していない事業主は,
不足1人当たり原則月額5万円の納付金を支払う義務が生じます。

逆に法定雇用率を達成した場合には,
超過1人あたり2万7000円の調整金が支払われることになります。

4 差別禁止と合理的配慮

障害者雇用促進法では,
雇用の分野での障害者の差別を禁止しています(障害者雇用促進法34条以下)。

募集・採用,賃金,昇進などの雇用におけるあらゆる局面で,
障害者であることを理由に差別をすることが禁じられています。

ただし,積極的な差別是正措置として障害者を有利に扱うことや,
合理的な配慮を提供し,労働能力などを適正に評価した結果として
障害者でない者と異なる取扱いをすることまで禁止されるわけではありません。

また,事業主は,障害者に対する合理的な配慮を
過重な負担とならない範囲で提供することも求められます。

例えば,視覚障害のある者に対して点字や音声で採用試験を行うこと,
知的障害がある者に対して図などを活用した分かりやすい業務マニュアルを作成したり,
指示を明確に行うこと,精神障害がある者に対して,
出退勤時刻や休暇に融通を利かせることなどが考えられます。

合理的配慮の内容は,
障害者一人一人の状態や職場の状況に応じて求められるものが異なりますので,
個々の障害者の方と事業主との間の相互理解のもとで提供されるのが望ましいものと考えられます。

5 終わりに

障害者の方でも,その障害の状況や程度,
業務の内容などによっては自己の能力を発揮できる方が多くいらっしゃいます。
障害を持つ方それぞれの能力に合わせて労働をすることができれば,
その障害者の方のためだけでなく,社会全体にとっても有意なのではないでしょうか。

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