弁護士堀鉄平の交渉の奥義!”勝負を有利に進める情報戦の駆け引き” その1
あまりに正直過ぎる選手たち
さて、格闘技の試合で、
試合前から右膝を故障している選手がいるとします。
そして、その痛めている右膝に大々的にテーピングを巻いて出場したとします。
これはもう、そこを蹴ってくださいと言っているようなものです。
当然、相手は思いっきりその右膝に狙いを定めてローキックを蹴りこんでくるでしょう。
このように正直に怪我の箇所を告白する選手が多すぎます。
命を懸けて戦う真剣勝負の格闘技の世界では、
自分に不利な情報を見せることが致命的となる場合があります。
一般に、交渉の世界でも、自分に不利な情報は隠すのが鉄則です。
たとえば、私のオフィスのコピー機が壊れたことがありました。
コピー機には印刷機能もついていて、
当時1台しかなかったそのコピー機が故障したことにより、
裁判所への書面などを作成することができなくなり、
事務所としては困った事態となっていました。
そうしたところ、私の秘書が業者を呼んで、
新しいコピー機購入の見積もりを出してもらいました。
秘書は、業者に対して、
「当事務所のコピー機はこの1台しかなく、
しかし明日にでも裁判所への書面を提出する必要があるので、
印刷機器がないと本当に困ってしまいます。早急に納品してください。
少しでも早く納品してもらわないと、FAXも受信できないですし、
事務所の活動が停止してしまいます」と、
ご丁寧に事務所の現状を告白した上で、
「ところで、料金ですけど、なるべく安いもので探してください」
と交渉を仕掛けたのでした。
私は、そのやり取りを聞いていたので、
これはまずいと思ったのですが、秘書に勉強してもらおうと思い、
そのままにしておきました。
案の定、業者は、
「超特急で納品しますが、急ぎで仕入れるとなると、
中古品を探す時間もありませんし、この金額になってしまいます」として、
100万円の見積もりを出してきたのです。
だいぶ割高な料金を提示されてしまいました。
完全に足元を見られてしまったのです。
そうはいっても、実際問題、明日にでも納品してもらいたいので、
100万円を支払ってでもこの商品を購入すべきとも考えられます。
商品自体は悪くありません。ただ、100万円は高いと感じたのです。
(その2に続きます!)