弁護士堀鉄平の交渉の奥義!”相手を納得させる、3つのポイント” その②
(その①の続きです!)
多くても、少なくても難しいポイントの数
3つ目は、ポイントを1つ2つでなく3つ挙げることで、
1つ2つに反論されても、1つでも反論されない理由・根拠を挙げていれば、
論破されないで済むという点です。
具体例を検討しましょう。
あなたが引っ越し先として賃貸の新築マンションを探していて、
良い物件が見つかったとします。ただし、新築ではなく、築1年でした。
家賃は月額15万円です。このとき、あなたが不動産業者に
「新築ではないので、もう少し家賃を安くしてくれませんか。」と交渉してみても、
「築1年の人気物件ですから、これ以上は安くなりませんよ。」と返されて交渉は終了してしまうことでしょう。
これは、こちらの根拠であるポイントを1つしか挙げていないからです。
このとき、「うーん。この物件は悪くはないんですが、
3点ほど気になるところがあります。そもそも新築でないし、
駅から(10分と)やや距離があるし、あとはここの窓の形が自分の好みと違うので、
もうちょっと家賃を安くしてくれないと契約する気になりません。」と切り出してみると、どうでしょうか。
不思議なことに、不動産の営業マンは、契約をまとめたくて仕方がないのか、はたまた、
借り手に3つも気に入らない点があるのだから家賃を減額しないと契約してもらえないと思うのか、
家賃交渉に乗ってくるケースが多いように感じられます。
さきほど挙げた1つ目の理由のように、「こちらに理由や根拠が3つもあるのだから」と、
納得しやすくなるものなのです。
もし営業マンが直ちには交渉に乗ってこなくても、こちらから、
「駅から10分の物件で、同様のグレードのA物件がありますが、A物件は家賃が12万円でした。
少なくとも12万円から14万円の範囲で交渉できませんか。」とか、
「なんでこういう窓の作りにしてしまったのでしょうね。
このせいで、日当たりも遮られるんですよね。」などと言って、
こちらから主導権を握ってしまうとよいでしょう。
そうすると、営業マンは、「A物件は入居者が少ないから家賃を下げたんですよね。
本物件も、もう1ヶ月入居者が見つからないと家賃を下げるかもしれませんが、
直ちにはちょっと難しいかもしれません」と反撃してくるでしょう。
こうなればしめたものです。
さきほど挙げた2つ目の理由のように、
こちらの掲げた3つのポイントがいつの間にか争点となっていて、
家賃の妥当性に議論が進んでいます。
ここまでくれば、「私は契約を急いでいませんので、1ヶ月待ってから、
家賃が下がるのを待って契約します」と言えば、
かなりの確率で、現段階で家賃を下げてもらえるでしょう。
さきほど挙げた3つ目の理由のように、築1年の点や、窓の形の点は、
「それくらいは我慢しましょう」と遮られてしまっても、
ポイントの1つである駅からの距離の点を論破されなければ、
交渉を優位に進めることができるのです。
この方法で家賃が必ず安くなるわけではありませんが、
少なくとも、3つのポイントを示さず、
単に、「もう少し家賃を安くしてくれませんか。」とお願いするよりは、
交渉に乗っかる可能性が高いはずです。
なお、ここで、3つではなく、5つのポイントを挙げるとどうなるかと言いますと、
相手は、こちらに5つも不満な点があるのであれば、
交渉成立は難しいだろうと交渉を投げ出してしまうでしょうし、
ポイントを挙げすぎると単なるクレーマーと思われてしまいますので、
やはり3つにしたほうがよいのです。
このように、「ポイントは3つです」と整理して話をするということは、
相手から、理路整然としてわかりやすいと思われるきっかけにもなるのではないでしょうか。
参考にしていただければ幸いです。
では、今回はこの辺で。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。