弁護士堀鉄平の交渉の奥義!”「使いこなせ!全ての「武器」を」 その②
(その①の続きです!)
ではどうするかですが、私ならば、「A君はおれのすべてだ。」
「親権は母親が常識というけれども、それは子供が幼い場合の話で、
A君はもう小学生になっているんだから母親でなければいけないってことはないだろう?
それに、経済的にもおれと生活している方がきちんとした大学にも行かせてあげられるんだから、
親権は譲らないよ。あと、慰謝料だって浮気云々はおれにも言い分があるんだから、
200万円なんて到底払うことはできないよ。財産分与にしたって、
全部僕が稼いできたお金なんだから、半々てことはないだろう」と、まずは切り出します。
そうするとどうなるかと言いますと、妻として、
親権がとれなくなるかもしれないという可能性について、内心焦ることになります。
妻にとっては子供が全てであるにもかかわらず、
「夫の言い分にも一理あるから、これはひょっとしてまずいかもしれない」となるでしょう。
そうすると、妻は、お金の部分はあまり無理を言わないにしても、
親権だけは絶対確保したいという心理になるでしょう。
夫としては、そのような妻の顔色の変化を確認しつつ、
じっくり時間をかけて悩んだフリをして、
「わかった。お前の子供に対する思いは伝わったよ。
おれだってA君はかわいいけど、お前がそこまで言うんなら親権はお前に譲るよ。
その代わり、お金の面はおれの希望を聞いてくれよ。
養育費は月に6万円。これだけあれば最低限生活はできるだろう。
慰謝料と財産分与は合わせて500万円だ。
これでお互いに言いあいっこなし。
これがだめなら、おれも譲歩するのは嫌だし、
最悪裁判になっても仕方がないと思っている。」と言ってみます。
これで成功するかどうかはケースバイケースですが、少なくとも、
「もう少し安くならない?」と単に聞くだけよりは格段に成果があがります。
この事例では、親権についても一応主張できる立場にあるという武器を簡単には捨てず、
むしろ最大に利用したということに注目してください。
このように、交渉では、自分に興味がないことも相手にとっては
一大事であるということがありますので、
それを武器にして使いこなすべしということを覚えておいてください。
こうやって説明すると、「浮気して離婚することになった上、
子供の養育費と慰謝料を値切る最低な男」と思われるかもしれませんが、
あくまで分かりやすい例えを選んだだけですので、ご了承ください。
では、今回はこの辺で。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。