債権回収の第一人者!堀鉄平弁護士が教える!BtoCビジネスを成功に導く『債権回収』vol.30 債権回収における支払い約束の取り付け方法について
本日は、自社回収手続きにおける支払い約束の取り付け方法について解説いたします。
債務者との電話交渉の結果、債務者が支払いを約束して、
それで債権者が合意すれば、法的には和解契約が成立します。
この和解契約の成立は口頭で足り、書面で交わす法的な必要性まではありません。
特に少額の債権回収の場合には、個別に逐一債務者と書面を交わしていくのは
現実的ではありませんし、書面作成・発送のコストは馬鹿になりません。
また、債務者の中には、「とりあえず書面を送ってくれ」という方便で
支払いの話を後回しにして、結局支払わないというケースも散見されます。
そこで、和解契約を成立させる場合には、書面ではなく、
口頭だけで済ませるのが現実的と言えるでしょう。
口頭で和解する場合の注意点は3つあります。
まず、支払金額と支払い期限を明確にすることです。
債務者の中には「今月中にできるだけ支払う」とか、
「お金が入り次第支払う」とか、抽象的に特定を避ける人がいます。
これでは和解契約の内容が具体的に特定されておらず、
そもそも和解として有効に成立していると言えません。
また、そのような抽象的なお話では、債務者としても支払いができなくても許される
(詰められることはない)という甘えが生じてしてしまい、
回収につながらないケースが多くなります。
よって、そのような債務者に対しては、具体的に何月何日に
何円支払うのかを明確にさせ、それを電話越しに復唱することが必要となります。
次に、一度でも支払いが滞ると和解の話は白紙に戻るということを説明することです。
本来は、延滞している債権については、
即刻全額を支払ってもらう権利が債権者にはありました。
ところが和解契約をすることで、
債務者は和解で決めた支払期限までは支払いを
待ってもらえることになります(これを期限の利益といいます)。
例えば、残債務が3万円の債務者との間で、3月末日から毎月1万円の3回払いの和解が
成立した場合で、債務者が3月の支払いを滞ったとします。
この場合でも、4月早々に債権者が請求できるのは
3月末に支払う予定であった1万円のみであり、
3万円全額の請求をすることはできないのです。
そこで、この期限の利益を喪失させるために、
和解契約の中で、債務者が一度でも契約不履行をした場合、
期限の利益を喪失させて残りの債権を即時全額請求できるという原則に戻すという
契約としておくことが必要となります。
この点を和解の電話の中で、債務者に説明して納得させることが重要です。
最後に、上記のように債務者が和解契約を破った場合、
期限の利益が喪失するだけではなく、弁護士に委託することになるとか、
遅延損害金が発生するということを説明しておくことです。
このような制裁をちらつかせることで、
債務者の和解契約の遵守を促す効果が得られます。
本日はここまでとします。
最後までお読みいただきありがとうございました。