弁護士堀鉄平の交渉の奥義!「与えて得る」という発想 その①
経験曲線効果と成長志向価格戦略
経験曲線効果という言葉をご存知でしょうか。
累積生産量の増加に伴って、製品数量ごとの間接費を含めた総コストが
予測可能な一定の割合で低下していくことを指します。
要するに、たくさんの注文が入って、たくさんの商品を生産すれば、
商品一個当たりの経費は少なくなるというものです。
同じ家賃を払っている現状で、
多くの商品を生産すれば一個当たりの家賃が低くなるのは当然です。
さて、メーカーや小売店は、このような経験曲線効果を意識して、
その商品の価格を決定していくのですが、
価格戦略の一つに、成長志向価格戦略というものがあります。
商品の生産量の少ないときにはコストを下回る価格を設定して、
できるだけシェアを獲得していきます。
すなわち赤字覚悟で売りまくるのです。
そうすると、大きなシェアを獲得できますので、生産量も増加し、
上記の経験効果を発揮して、急速に一個当たりのコストを下げることが可能になります。
そして、累積生産量の増加に伴ってコストが下がると、
それにしたがって価格も下げていくという方法です。
シェアも獲得し、長期的には利益も出るという非常に合理的な戦略なのです。
ここでのポイントは、2つあります。
1つは、当初の商品の売り出し時期に、赤字を恐れないということです。
赤字を嫌がり、生産量の少ない時期のコスト(高コスト)に合わせた高価格を設定していては、
売れ行きは鈍ってしまいます。
2つ目は、生産量が増えてきて、コストが下がったら、すぐに価格も下げるということです。
これらは、いずれも、相手(購買者)から「奪わない」・「利益を与える」ということです。
それにより、結果として、ライバル企業よりも多くのシェアを獲得し、
コストを下げることで、利益を出すことが可能となるのです。
目先の利益(コスト割れしないようにとか、
コストが下がっても利益を上げるために価格を維持しようとか)を優先すると、
かえって損をしてしまう例です。
(その②に続きます!)