反社会的勢力排除条項の必要性について その② 弁護士 吉新 拓世
(その①の続きです!)
契約書に盛り込む条項の例を作成してみました。
注意点をいくつか解説します。
第●条(反社会的勢力排除)
甲及び乙は,それぞれ相手方に対し,次の各号の事項を確約する。
① 自ら又は実質的に経営権を有する者が,暴力団,暴力団員,暴力団準構成員,暴力団関係企業、
総会屋,社会運動等標ぼうゴロ,特殊知能暴力集団,若しくはこれらに準ずる者又はその構成員,
又はこれらに過去5年以内に該当したことがある者(以下,これらを総称して,「反社会的勢力」という。)
ではないこと。
② 自らの役員(取締役,執行役,監査役,執行役員又はこれらに準ずる者をいう。)が
反社会的勢力ではないこと。
③ 反社会的勢力に自己の名義を利用させ,この契約を締結するものでないこと。
④ 自ら又は第三者を利用して,次の行為をしないこと。
ア 相手方に対する脅迫的な言動又は暴力を用いる行為
イ 風説を流布し,偽計若しくは威力を用いて相手方の業務を妨害し,又は信用を毀損する行為
ウ法的な責任を超えた不当な要求行為
甲又は乙は,相手方が次の各号のいずれかに該当した場合には,
何らの催告を要せずして,本契約を解除することができる。
ア 前項第1号又は第2号の確約に反する申告をしたことが判明した場合
イ 前項第3号の確約に反し,この契約を締結したことが判明した場合
ウ 前項第4号の確約に反した行為をした場合
前項の規定により本契約が解除されたときは,解除した者は,
当該解除により解除された者に生じた一切の損害について,賠償責任を負わない。
第2項の規定により本契約が解除された場合,解除した者に,当該解除により生じた損害があるときは,
解除された者は当該損害(合理的な弁護士費用を含む。)を賠償するものとする。
●「反社会的勢力」という概念自体,そもそも抽象的な側面が強いため,
出来る限り明瞭な定義規定を設ける必要があります。
また反社会的勢力の構成員は,暴力団員であることを隠して表面的には暴力団員ではないように装ったり,
暴力団を脱退したり破門されたかのように装うケースもあります。
そこで,そのような偽装工作がなされている場合にも対応できるような定義規定にする必要があります。
条項例では,警察庁が定める「組織犯罪対策要綱」の定義規定を参考にしつつ,
脱退や破門を偽装した場合にも対応できるように過去5年間に構成員であった場合にも
反社会的勢力に該当するとの規定にしました。
●契約の関係者が反社会的勢力に属しているかを問う「属性要件」のみならず,
相手方が一定の行為をしたときにも解除権が発生するよう「行為要件」をも定めておき,
「属性要件」か「行為要件」のいずれか一つを満たせば,
解除できるようにしておく定め方が一般的です。
条項例では,第1項第1号,第2号において「属性要件」を定め,
第4号では「行為要件」を定めています。
●解除権の発生要件と共に,解除権を行使した場合に,解除権を行使した当事者は,
その解除によって発生した損害について賠償責任を負わず,
逆に解除された当事者は,解除した側の当事者に発生した損害を賠償する旨の定めを置くことが一般的です。