弁護士堀鉄平の交渉の奥義!交渉における「勝利の方程式」とは その①
目的を見越した式の構築を図れ
本日は、交渉における勝利の方程式をご紹介します。
最初に野球のお話をします。
先発投手が勝ち投手の権利を得た後、抑え投手に繋ぐまで投げ切れればよいのですが、
6イニングや7イニングを投げて降板することがあります。
その場合、抑えの投手はほとんどのチームが1イニング限定登板ですから、
7回や8回を投げるピッチャーが必要になります。
そこで1イニングや2イニングだけビシッと抑えてくれるピッチャーが近代野球では必要となり、
セットアッパーという「繋げる」中継ぎ投手が注目されるようになりました。
そして、先発投手の後を繋ぐ、セットアッパー及びストッパーに実力のある投手を確保し、
先発投手からの勝利の方程式を敷けるチームが強いチームと言えます。
このような勝利の方程式ですが、実は交渉においても非常に重要です。
例えば、外注先2社に印刷業務を発注している企業が、
印刷コストを下げてもらうためにどのように交渉していけばよいでしょうか。
外注費削減には、実は勝利の方程式があります。
まずは、「よりスキルの高いものを提供してもらうため」と称して、外注先を3社に増やします。
これにより、A社とB社それぞれに毎月1500万円(単価5000円×3000部)の発注をしていたのが、
A社、B社、C社にそれぞれ月1000万円(単価5000円×2000部)ずつの発注となります。
その後、しばらくしてから、「当社も経費削減が至上命題なのですが、取引先企業様に対して、
何もなく値下げしてくれとは言いづらいですので、
発注量を増やす代わりに単価を下げてくれませんか」と交渉します。
そうすると、各社競争の上、見積もりを提示してきますので、
見積もり単価(4000円)の低い2社に対して、発注量を月2000部から3000部に増やします。
これにより、毎月のコストが、従前の5分の4に減ります。
方程式は簡単です。外注先を増やす→一社当たりの発注量が減る→一社当たりの発注量を増やすからと、
減額をお願いする→二社に戻すことにより一社当たり発注量を増やし、減額に成功する。
この方法は、全体の発注量は以前と何ら変わらないにもかかわらず、
一時、外注先を1社増やすことにより一社当たりの発注量を減らして、各社に価格を競争させ、
価格が下がったら一社当たりの発注量を元に戻しているだけです。
道義的な問題や、下請け法等の法律はおいておくとして、最近、よく見かける手法です。
大事なことは、交渉においても、4を見越して、1→2→3→4と勝利の方程式を敷くことです。
(その②に続きます!)