「商品の安全表示と誤使用」 その② 弁護士 吉新 拓世
(その①の続きです!)
裁判例をいくつか紹介いたします。
【事例 1】
遠赤外線により体を温めるドーム型サウナをフィットネスサロン及び自宅で使用したところ,
下半身に網状皮斑を発症し,後遺症が残った事案において,
「痩身器具や美容器具の場合,使用者が長時間かつ負荷を大きくして使用すればその分効果があると誤解して,
長時間かつ負荷を大きくして使用を継続することが容易に予見できるから,
製造業者等は,長時間,過剰に使用することにより発生することが想定される危険を具体的に摘示した上で,
一日の使用限度時間や回数,連続使用の禁止,過剰に負荷のかかる使用方法の禁止及び異常が生じた場合の
対処方法等の警告を使用者が明確に理解できる形で表示する義務がある」とし,
取扱説明書に「設定された時間以上の使用は避けてください。
連続使用は低温ヤケドや健康を損なう原因になることがあります。」とあるだけで,
機械本体にも上記のような指示・警告表示がないとして,
指示・警告状の欠陥を認め,損害賠償を命じた(但し,過失割合4割)。
(大阪地裁平成22年11月17日判決)
★裁判所が要求する指示・警告内容は,
「過剰に使用することにより発生することが想定される危険を具体的に摘示」,
「一日の使用限度時間や回数」,「連続使用の禁止」,「過剰に負荷のかかる使用方法の禁止」,
「異常が生じた場合の対処方法」など多岐にわたっており,
かなり詳細な表示が必要であることがわかります。
【事例 2】
祖母が1歳10か月の幼児にこんにゃくゼリーを与えたところ,喉につまらせ,
救急搬送されたものの2カ月後に死亡した事案で,
12個入り外袋の表面に,横2.6センチメートル・縦3センチメートルの大きさで,
赤色の(×)印の中に子供と高齢者が息苦しそうに目をつむっている絵が描かれ,
その上に「こんにゃく入りゼリー」,
その下に「お子様や高齢者の方は食べないでください」と記載されていること,
その裏側の右下に,赤字で「警告」と冠した赤字の横約6センチメートル・縦約5センチメートルの赤枠内に,
・お子様や高齢者の方は,のどに詰まるおそれがありますので,食べないでください。
・万が一,のどに詰まった場合には,膝の上にうつ伏せにして背中をたたくか,
または,にぎりこぶしをみぞおちに当てて押し上げ,吐き出させてください。
・お子様の手の届かないところに保管してください。
と記載されていること,個別包装のミニカップの容器の上蓋にも「吸い込まずに底をつまみ押し出し,
よくかんでお召し上がり下さい」と記載されていたことを指摘し,
指示・警告表示として欠けるところはないとして,製造業者の責任を否定した。
(大阪高裁平成24年5月25日判決)
★相当詳細な危険性表示がなされていたことから,製造業者の責任が否定されたものです。
(その③に続きます!)