~ エビデンスを求める効果 ~ その2 弁護士 堀 鉄平
(その1の続きです!)
さらに内容の精査を
先日も、ある裁判でこちらに有利に和解を進めることができたのですが、
このようにエビデンスを求めたことが功を奏しました。
その裁判は、当方が相手方会社に対して
一〇〇〇万円の貸付金の返還を求めるもので、
貸付金の存在は争われていませんでしたが、
海千山千の相手方代理人は、「会社の経営が厳しい」として、
月額一〇万円を支払う和解を提案してまいりました。
月額一〇万円の支払いでは、
完済までに八年以上もの歳月を要しますし、
その間に支払いが滞るリスクもありますし、
当方は一〇〇〇万円を長期間寝かせておくことにもなります。
到底受け入れられるものではありません。
そこで、私は、相手方代理人に対し、
相手方会社の直近の決算書の開示を求めました。
相手方代理人は難色を示しましたが、
私は、「会社の経営がそこまで厳しいのであれば、
我々も譲歩することは検討せざるを得ないが、
何かしらのエビデンスがないとクライアントに対して説明がつかない」と強く迫り、
また裁判官からの説得もあって、相手方代理人も渋々決算書の開示に応じたのです。
決算書は一見すると赤字決算でしたが、
私は、その決算書の内容を精査し、役員報酬が過大であること、
被告会社の関連会社に外注費として毎月一定額の支払いがあることなどから、
表面上の経常利益は赤字であるものの、
必ずしも被告会社の経営が厳しいとは言えないことを指摘し、
月額三〇万円の支払いを認めさせたのです。
このように、交渉相手にエビデンスを求めると、
相手方の誤魔化しを解消させ、こちらに有利に交渉を進める糸口となります。
ちなみに、決算書には、今後入金が予定されている売掛先や
銀行口座の情報などが満載ですので、
万一相手方が和解金の支払いを怠ったときのための差押え先として、
こっそりメモを取っておくのが常套手段です。
皆さんも、知人にお金を貸して返済してもらえないということがあれば、
まずはエビデンスを求めてみましょう。
「来月以降に入金があるからそれまで待ってくれ」と言ってくる知人に対しては、
「私はあなたを信用しているが、妻の決裁を取るには、 具体的な話がないと待つのは難しい。
いつ、どこから、いくらの入金があるのか、 客観的な話があれば待ちますよ。」と回答してください。
もしも知人から明確なエビデンスが出てこなければ、
結局来月になっても支払いがされることはないでしょう。
仮に、○○出版社から原稿料の支払いが
毎月一〇日にされるといったエビデンスが出てくれば、
それは後日差押えの候補にもなるということを覚えておいてください。
それでは、今回はこのあたりで。
最後までお読みいただきありがとうございました。