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強固な盾となる,「誠実な対応」その1  弁護士 堀 鉄平

言わば当然の手法がもたらす効果

さて、今回は、こちらに非がある交渉の場面では、
「誠実な対応をする」という言わば当然の手法をご紹介いたします。

ここで、「誠実な対応をする」とは、
「相手の言い分に耳を傾け、十分過ぎるほどに丁寧な対応をすること」と定義づけいたしますが、
こちらが責められる場面では、誠実な対応は強固な盾となります。

例えば、先日も、ある交渉の依頼で、依頼者に100%非がある案件があったのですが、
誠実な対応をしてうまく切り抜けた事件がありました。

この事件は、私の顧問先であるレストランがお客様のバッグを保管していたのですが、
担当者のミスでそのバッグを紛失してしまったという事案でした。

このお客様は、当然怒り心頭で、バッグ自体が100万円相当のブランド品であり、
またバッグの中に高級ネックレスが入っていたとして、
合計200万円を支払うよう要求してきました。

このとき、烈火のごとく怒る相手に対して、
「ありもしない金額をふっかけてきたな」と疑う素振りを見せれば、
相手はより意固地になり、話し合いどころの騒ぎではなくなります。

場合によっては、レストランの風評を害する噂・インターネットの書き込みなどにもつながりかねません。

このようなこちらに非があるケースでは、相手の言い分に耳を傾け、
十分過ぎるほどに丁寧に対応することが必要です。

そこで、私の指示のもと、
「ご迷惑をおかけして申し訳ありません。お客様の大切なバッグですので、
当方としてはできる限りの捜索をさせていただきます。
都度ご報告いたしますので、お待ちいただけますでしょうか。」として、
顧問先にまずはバッグを探す努力をしていただきました。

その日に来客した顧客リストをもとに、一人一人の来店客に対し、
誤ってバッグを持ち帰っていないか電話をかけたり、
その日に出勤した従業員全員に対する聞き取りを行っていただきました。

そして、被害者たる相手に対して、捜索の途中経過の報告をしてもらったのです。

十分に時間をかけて捜索をして、都度丁寧に報告を重ねていくことによって、
当初怒り心頭であった相手方も、「ここまでやってくれたのであるから、もう捜索は結構ですよ。」
と言ってくれたのです。

このように、誠実な対応は、相手の怒りを鎮めるという点で、盾になります。

そして、バッグが見つからない以上、次に、バッグや紛失した中身の弁償をすることが誠実な対応となりますが、
これは、必ずしも相手の200万円という言い分を100%受け入れることではありません。

 

(その2に続きます!)

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