弁護士堀鉄平の交渉の奥義!「Win-Winの関係がもたらすもの」その1
双方の利益最大化のために
さて、今回は、交渉の奥義として、「Win-Winの関係」を築け!
ということをご紹介いたします。
交渉の場面では、お互いが自分の利益のみを最大にすることを考えて
相手方の利益を無視すると、結果として、双方の利益が最大にならないことがあります。
つまり、自分だけが得をするはずが、かえって損をしてしまうのです。
そこで、交渉においては、最初から相手方の利益にも配慮して、
「Win-Winの関係」を築くことが、結果として自分の利益を最大にすることにつながるのです。
私が対応した事件で、以下のような刑事事件がありました。
週末金曜日の最終電車に乗った男性(以下「A男」(仮名)といいます。)が、
飲み会帰りの人で混雑した電車内で、前に立っていた女性(以下「B女」(仮名)といいます。)の
お尻を触ったという迷惑防止条例違反の容疑で、現行犯逮捕され、警察署に逮捕・勾留されました。
A男は、有名企業に勤務している若い男性で、同じ前科が一犯ありました。
A男は、今回の容疑を認めていましたが、勤務先の人事担当者に前科を知る者がいたこともあって、
逮捕・勾留の事実が勤務先に発覚したら、懲戒免職を免れられない状況であり、
何とか早期釈放してもらうべく、私に刑事弁護の依頼をしてきたのです。
このような状況では、A男の最大の利益は、早期に身柄を解放されること、
すなわち起訴を免れることでありました。
他方で、B女の方は、当然のことですが痴漢に遭ったことに激怒していました。
そのため、A男を起訴させて、できる限りの重い罪を負わせることを望んでいました。
また、今後、A男がB女と接触しないことの確証や、
示談金をなるべく多く受け取ることもB女の願いでした。
このようなケースで、弁護人として、A男のためにどのような示談交渉を進めていけばよいのでしょうか。
A男のために、できるだけ示談金が低くなるように交渉の奥義を駆使するべきでしょうか。
確かに、拙著「反撃の技術」(かんき出版)ノゲイラ型反撃のテクニックによれば、
時間をたっぷりかけることで相手にしびれを切らせ、
低額な金額で示談にこぎつけることも可能だったかもしれません。
しかし、示談金も値切りたい、
早期に釈放もされたいというのでは、虫が良すぎます。
交渉では、全てを勝とうとするのではなく、
こちらの最大の利益を確保するために譲れない部分にさえ勝利すれば、
その他は相手に勝たせるというのが早道です。
そこで、次回は私が取った戦略についてお話いたします。
(その2に続きます!)