弁護士堀鉄平の交渉の奥義!「アメの効用、ムチの効果」その2
(その1の続きです!)
まず、十分にムチを振るって
このような約束を破る相手に対しては、
「契約書通り、残元金一括+遅延利息を請求します」
「支払いがない場合は、粛々と法的手続きを進めるほかありません。
その場合は、弁護士に依頼して差押えなどもすることになりますよ」
などと、ムチを振るっておきましょう。
そして、一定期間を置いて、相手に対して、
事の重要性を認識してもらう必要があります。
1週間も過ぎたころ、相手は、
「Aは友人だと思っていたが、本当に差押えなどされるかもしれない」
「その場合は勤務先にも借金がばれてしまう」などと焦りつつ、
「Aに対しては、優先的に返済しないといけないぞ」という心理になるはずです。
その段階で、こちらから、
「Bさん。これまで返せ返せときついことを言って申し訳なかった。
私にも家族がいるので察してください。Bさんの苦しい状況も分かりましたので、
今回は特別に月額5万円で無利息の36回払い返済で手を打ちましょう。」とアメを与えるのです。
Bさんとしては、差押えまで覚悟していたところに、
これまでの返済計画よりもだいぶ緩い和解案が出てきましたので、
こちらに感謝せずにはいられません。
まさに、営業マンから十分な接待を受けたような心境に陥ります。
Bさんが、こちらに確実に返済したいという心理になるのは当然です。
ちなみに、このようなムチを振るってからアメを与えることは、
相手に対して、優先的に確実に返済しようという気持ちを想起させるだけでなく、
相手から更なるお土産を貰うことにもつながります。
差押えをちらつかせた段階で、緩い和解案を提示するのと同時に、
「ただし、こちらがここまで譲歩するのですから、保証人か担保を付けてください。
どちらか付けてもらえれば、私も妻に説明できますので。」と交渉してみましょう。
最初からアメを与えていた場合は、保証人や担保を付けることに協力することはないでしょうが、
ムチを十分に振るってからアメを与えることで、相手はこちらにより感謝し、
またアメを取り下げられても困る一心で、必死に保証人を探してくることになります。
このように、アメを与えるならば、
まずはムチを振るってからという原則を覚えておきましょう。
格闘家が激闘を繰り広げた後に、抱き合って互いの健闘を称え合うのは、
それまでの命をかけた攻防(ムチ)があってこそです。
どちらかが手抜きの試合をしたり、準備が疎かなまま試合に出てきた相手に対しては、
寄り添おうというアメの気持ちにはならないものです。
是非、皆さんもアメとムチを使いこなして、
相手の方から寄り添ってくるような交渉術を覚えて頂ければと思います。
それでは、今回はこのあたりで。
最後までお読みいただきありがとうございました。