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改正民法に定型約款に関する規定が新設されることについて その① 弁護士 宮川 敦子

1 民法改正について

我々の生活に身近な民法ですが,明治29年に民法が制定された後,
債権関係の規定(契約等に関するルール)については,
約120年間ほとんど改正がありませんでした。

しかし,取引の複雑高度化,高齢化,情報化社会の進展等,社会・経済は大きく変化しました。
また,多数の判例や解釈論が,法定されないまま実務に定着しています。

そこで,平成21年10月から数年にわたる審議を経て,
平成29年6月2日に民法改正法が公布されました 。(※1)

今回は,200以上ある民法改正の項目のうち,「定型約款」について見てまいります。

2 定型約款についての規定の新設

1 約款取引について

約款を用いた契約方法は,実務上,保険約款,旅行業約款,宿泊約款,運送約款等,
様々な業界で従来から広く行われてきました。

そして,昨今,ネットショッピングの利用時,携帯電話加入時等,
特定の企業が不特定多数の相手方と同一内容の契約を締結する時など,
約款を活用する取引はますます増加しています。

しかし,現行民法においては約款に関する規定は存在しておりません。

約款は契約当事者がその内容を把握しないまま契約締結に至ったり,
一方当事者にばかり有利な規定が存在したりするなど,
裁判で争われるケースも少なくありませんでした。

そして,どんな場合に約款が適用され,どのような場合に約款中の条項が有効となり,
または無効となるのかについては,必ずしも明確ではありませんでした。

このような状況を受けて,改正民法では約款を用いた取引の安定を図るために,
定型約款についての条文が新設されることとなりました 。(※2)

2 「定型約款」の定義(改正民法548条の2)

改正民法は,まず「定型取引」を「ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって,
その内容の全部または一部が画一的であることがその双方にとって合理的なもの」と定義したうえで,
「定型約款」を「定型取引において,契約の内容とすることを目的として
その特定の者により準備された条項の総体」であると定義しています。

貴社が現在利用されている約款が,特定の企業間の取引においてのみ用いられている場合,
当該約款は「不特定多数の者を相手方として行う取引」に用いられるものとはいえません。

その場合には,改正民法の定型約款に関する条文の適用は受けないことになります。

契約当事者間の紛争を未然に防ぐためにも,
まずは「定型約款」に該当するか否かの選別が必要です。

3 各規定の内容

改正民法で新設される定型約款に関する規定の数は,次にご紹介する3条です。個別に見てまいりましょう。

—————————

※1) 民法改正法の施行時期については,公布の日から3年を超えない範囲内において
政令で定めるとされています(改正民法附則1条)。

※2)ただし,新設といっても,これまでの裁判所の考え方が変わるという話ではありません。
新設された条文は,これまでの裁判所の考え方を条文化した内容になっています。

(その②に続きます!)

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