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『民法改正による消滅時効の改正点』 その2 弁護士 森 春輝

(その1の続きです!)

3 協議を行う旨の合意による時効の完成猶予

現行法では,消滅時効の完成を妨げる制度として,
時効の中断(現行民法147条)及び
時効の停止(現行民法159条~161条)という制度があります。

時効の中断とは,裁判を起こしたり,
債務者が債務の存在を認めたりしたときに,
それまで経過した時効期間をゼロに戻し,
その時点から再度時効期間の計算を始める制度です。

また,時効の停止とは,相続の発生や天災等があった場合に,
一定期間時効の完成を待つ制度です。

民法改正では,制度の内容はほぼ変わらずに,
表現のわかりやすさのため,
中断を「更新」,停止を「完成猶予」というように,用語が変更されました。

この時効の完成猶予に関し,
改正民法では実務上も重要となってくる点があります。

それは,この度新設された,
協議を行う旨の合意による時効の完成猶予(改正民法151条)という制度です。

これまでは,債権の支払いについて当事者間で話し合いが行われていても,
時効の完成が迫れば,それを防ぐために裁判を起こさざるを得ないことがありました。

そのような強硬な手段に出るとなれば,債務者の反発を買い,
まとまる話もまとまらなくなってしまいかねません。

そこで,改正民法では,
両当事者が話し合いによって解決しようとする意思を尊重するため,
協議を行う旨の合意による時効の完成猶予という制度を導入しました。

協議を行う旨の合意によって時効の完成を猶予させるには,
当事者間で権利についての協議を行う旨の合意が
書面によりなされることが必要となります。

そして,
①その合意をしたときから1年を経過したとき,
②合意によって1年未満の期間を定めたときはその期間を経過したとき,
③当事者の一方から,相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは,
その通知のときから6か月を経過したとき,

の3つの時期のうち,
最も早い時期まで時効の完成が猶予されることになります。

また,協議による時効の完成猶予の期間内に再度合意が行われた場合も,
もともと時効が完成するはずだったときから5年を超えない範囲で,
繰り返し完成猶予をすることができます。

この制度が新設されたことで,時効の完成が迫った債権についても,
焦って裁判をせずに,まずは話し合いにより回収を図ることが検討されます。

4 最後に

消滅時効は,債権者にとってみれば,
まったく債権の回収ができなくなる可能性がある重要な事項です。

消滅時効により債権が回収できなくなったという事態に陥らないために,
改正民法の施行日までに,上記の消滅時効の改正点もしっかり押さえておきましょう。

 

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