弁護士堀鉄平の交渉の奥義! 「攻撃は最大の防御!」の真髄。その2
(その1の続きです!)
「権限のある人を出さない」作戦との相乗
このことは、弁護士でもある私が
交渉をする際にも当然当てはまります。
例えば、私が顧問をしている会社が、
労働組合から賞与の支給額のアップを要求されて困っている事案がありました。
社長としては、この不景気に賞与を一切カットしたいくらいなのに、
従来より金額を上げるなんてとんでもないと思っていました。
一方で、かわいい社員のために、
現状維持ならば約束してあげたいとも思っていました。
そこで、「何事も話せばわかる」と考えた社長は、
組合との団体交渉において、その旨(現状維持)を提案されようとしていましたが、
冷静な私は慌ててこれを制止し、
社長抜きで私と担当者レベルで団体交渉にのぞみました。
ここでの交渉のポイントは1つだけです。
どうやって、従業員たちに現状維持という着地点に満足してもらえるかです。
最初から現状維持を提示すれば、
現状に不満がある従業員たちは当然満足せず、
もっと上げてくれと思うものです。
そこで私は、「現状は維持するから勘弁してくれ」
といったディフェンスから入るのではなく、
「今期の売上は前年比●●%ダウンし、
また、あなたたち従業員の会社に対する貢献度は・・・から、
まことに遺憾ですが、賞与の支給は5割削減とさせていただきます。」
と逆に攻撃的に出たのです。
組合とはなるべく穏便にと思っている社長は、
このような攻撃的交渉に二の足を踏んでいましたが、
別に組合の顔色を窺うのがポイントではありませんから、
私は積極的に嫌われ役を買って攻撃しました。
当然、組合からは怒号が飛び交い、一時騒然となりましたが、
2週間ほど時間を空けてみるとようやく落ち着いてきました。
この段階で、従業員たちは、
「うちの会社はまずいんではないだろうか?
いや、どこの会社も不景気なだけで、倒産まではしないだろうが、
こういう時代に賞与を上げろと言ったのは図々しかったかもしれないな。
こうなったら、賞与はもらえるだけでもありがたい。」
という心理になったはずです。
そこで、私は間髪入れずに、社長自らを団体交渉に出席させ、
「うちの顧問弁護士が、会社の経営のことを思い、
みんなの賞与を半減させると提案したと思うが、
私の一存で、何とか現状を維持することをここに提案したい。」と言わせたのです。
これにより、組合員たちは喜びが頂点に達し、社長に感謝の気持ちを表し、
うまく交渉がまとまりました。
私が十分攻撃したからこそ、結果として防御できたのであって、
最初から防御の姿勢では守りきれない一例です。
攻撃は最大の防御である。
昔から言われていることではありますが、
是非、日常の交渉でも試してみてください。
今回はこの辺で、最後までお読みいただきありがとうございました。